J/90は、J/Boats社が1997年から1998年にかけて製造した高性能レーシングヨットで、ロッド・ジョンストン氏の設計によるものです。全長約9.2メートル、ビーム幅約2.6メートル、喫水約2メートルの寸法を持ち、ディスプレイスメントは約1,497キログラムと非常に軽量です。
このモデルは、純粋なレース用として設計され、わずか1年間の生産期間中に5艇のみが製造されました。
デザインと構造
J/90は、軽量なファイバーグラス製のモノハル船体を持ち、フィンキールとスパードラダーを備えています。リグはフラクショナルスループタイプで、カーボン製のマストを採用しています。この設計により、軽量化と高い剛性を実現し、優れたセーリング性能を発揮します。
性能
J/90は、セイルエリア/ディスプレイスメント比が約32、ディスプレイスメント/水線長比が約75と、非常に高いパフォーマンス指標を持っています。これにより、優れた加速性能と高速巡航能力を発揮し、特に風上へのセーリングや軽風下でのパフォーマンスに優れています。
操作性
J/90は、バランスの取れたデザインと軽量な構造により、操作性にも優れています。舵の応答性が高く、クルーの人数が限られていても効率的なセーリングが可能です。デッキレイアウトはシンプルで機能的に設計されており、レース中のクルーの動線を最適化しています。また、カーボンマストの採用により、セイルトリムの調整幅が広く、さまざまな風況に対応できます。
居住性
J/90は、純粋なレーシングヨットとして設計されているため、居住性は最小限に抑えられています。キャビン内には基本的な設備のみが備えられており、主にレース中の短時間の休息や物品の収納スペースとして機能します。長期間のクルージングには適していませんが、その分、軽量化とパフォーマンスの向上が図られています。
総評
J/90は、純粋なレース志向のセーラー向けに設計された高性能ヨットで、その軽量構造と高いセイルエリア/ディスプレイスメント比により、優れたセーリング性能を発揮します。操作性も高く、経験豊富なクルーによるレースでの活躍が期待できます。ただし、居住性は最小限であるため、クルージング用途には適していません。限られた生産数と短い製造期間から、現在では希少なモデルとなっています。